絵具層の浮き上がりを接着し、次は支持体(キャンバス)の破れを補修しました。
修復工程:かけはぎ
作品の裏側から、キャンバスと同じ繊維(麻糸)と膠(にかわ)で破れを閉じます。この工程を「かけはぎ」とよんでいます。
麻糸そのままをキャンバスに接着すると、キャンバスに厚みができてしまい、変形の原因になってしまいます。それを回避するために、麻糸を削いで厚みを調整し、ジェル状にした膠を絡ませ、キャンバスに接着します。
糸と糸の間隔は1.0〜1.5mmで、長い糸・短い糸を交互に接着して力がかかる箇所を分散させることがあります。このような破れの他に、木枠とキャンバスを固定していた釘の錆(さび)により、キャンバスの穴が広がっていました。これ以上広がると、さらなる破れや描画面にも変形などの影響が出てしまうため、ポリエステル紙を接着し補強しました。
このようにキャンバスの破れや穴をふさいで強化することにより、この次のキャンバスの「変形修正」の工程に進むことができます。油彩画修復:修復前撮影と状態調査(02)でご紹介したように、入念な事前調査により安全な順序で修復工程が立案できる、ということが実感できます。
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