コロナ禍でスタートした藤田清孝作の油彩画修復ですが、仲間の助けもあり作業を進めることができました。今回は、修復事業の最初に必ず行う「修復前撮影」と「状態調査」についてご紹介します。
撮影の前に
まず、作品をイーゼルに立てかけて修復前の撮影をすることができるか、という確認をします。立てかけると絵具の破片がパラパラと落ちてくる、なんてことになったら、恐ろしいですよね。なので、はじめに作品にどのような損傷があるのか、丁寧に確認していきます。立てかけることができないと判断した場合は、俯瞰(ふかん)で撮影する、など安全な方法を試みます。この藤田清孝さんの作品の場合は、立てかけることには問題はなく、撮影はスムーズに進みました!
修復前撮影
修復前の撮影では、正常光での表と裏の撮影のほか、側光線・紫外線蛍光・赤外線反射写真の撮影をすることがあります。正常光写真は、高精細デジタルカメラを用いて細かな亀裂や剥落までも記録します。

このように修復前の詳細を記録するのは、修復後にはどこが損傷していたかわからなくなってしまった、という事態を避けるためでもあります。どこにどんな処置を施したか、また、いつどんな材料を使用したか、という記録をきちんと残すことも、修復家の大事な仕事なのです。
状態調査
修復前撮影のあとには、作品の状態調査をします。作品の来歴やサイズなどの情報を記録し、損傷地図を作成します。

様々な角度から丁寧に観察することで、撮影では見えていなかった作品の状態が鮮明になってきます。このほかに「耐溶剤テスト」では、どの部分・絵具はどの溶剤が使用できるかを明らかにするテストを行います。これらの情報をまとめたものが「調査書」で、これをもとに修復方針や修復計画を立案することができます。大きな作品だと調査する範囲も大きいため、その分時間がかかりますが、調査で作品の内容をしっかり把握しておかないと安全な作業ができません。
次のブログでは、状態調査後に何をするのか、少しづつですがご紹介しますね!
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